日本

2008年の海外映画市場の概況

22008年の外国映画は興行収入789億7,700万円と、2007年の1,037億9,800万円からマイナス248億2,100万円(前年対比76.08%)という大幅な下落となった。公開本数は388本で、前年の403本から15本減少した。パー・フィルムの興行収入では、2007年が2億5,756万円だったが、2008年は2億0,354万円と大幅に悪化した。興行収入10億円を超える作品は25本と、日本映画に比べ3本少ないだけだったが、大きなヒットがなかった。2008年の外国映画ナンバー・ワン・ヒットは「インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国」の57億1,000万円だったが、2007年は「パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド」(100億円)、「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」(94億円)、「スパイダーマン3」(72億円)と、今年の1位を上回る作品が3本もあった。この外国映画の不振は、若い世代の外国映画に対する関心の低下のためで、「インディ・ジョーンズ」などのシリーズものは、旧作を知る世代は取り込めても若い世代を獲得できない。また、世界で大ヒットする作品が日本ではそれほどのヒットとならない。「ウォンテッド」(25億円)、「カンフー・パンダ」(20億円)、「ダークナイト」(16億円)といった作品は、文化的には共通するところもある韓国では400万人を超える動員をしている。日本なら50億円前後のヒットである。そしてハリウッド映画でも中規模以下の作品になると、いわゆるBロード(2番手規模のチェーン)での消化試合のような興行になってしまう。この中で健闘が光るのは「レッドクリフ PartⅠ」(50億5,000万円)である。多くの業界関係者がある程度のヒットは予想しても、ここまでは見ていなかった。特に、中国との共同製作という、あまり成功例のないプロジェクトに出資したエイベックスに対して不安視する声も多々あった。この成功により、国際共同製作への流れが加速することが望まれる。そして「レッドクリフ」を配給した東宝東和にとっては、ユニバーサル作品を合わせて久し振りの大躍進となった。

やはりインディペンデントの大型作品、ギャガ、松竹共同配給の「ライラの冒険 黄金の羅針盤」は37億5,000万円を上げる大健闘をしたものの、決して満足できる数字ではなかったはずだ。インディペンデントによる、この種の大型買付は当たれば大きいがリスクも伴う。しかし、ギャガはエコロジーの時代を背景にドキュメンタリー作品「アース」(24億円)を大きなヒットに導き、「セックス・アンド・ザ・シティ」(17億円)、「ランボー 最後の戦場」(10億円)、3D映画「センター・オブ・ジ・アース」(8億5,000万円)と外国映画の輸入大手の面目を保った。

インディペンデント系の中規模公開作品では、アスミック・エースのウォン・カーワイ監督「マイ・ブルーベリー・ナイツ」の5億5,000万円は健闘したと言える。基本的に単館アート系のウォン・カーワイ監督作品を中規模で公開してここまでの数字を上げた。しかし、すべての作品をこのように拡大して成功させることはできない。この場合、ノラ・ジョーンズ、ジュード・ロウ主演の、アート系ではないラブ・ストーリー仕立ての宣伝が効いた。その他、角川映画「幸せの1ページ」の4億6,200万円、ギャガ「NEXT-ネクストー」の4億5,000万円、ムービーアイ「フィクサー」の4億円などが、このあたりの数字にとどまっていることは、買付とP&Aの原価を考慮すると外国映画ビジネスが厳しくなってきたことの証である。

さらにミニ・シアター系の外国映画になると、たいへん厳しい状況に突入している。特に2次使用の不振からビジネスとして成立が難しくなった。アカデミー賞作品「ノーカントリー」(パラマウント、ショウゲート)は3億4,000万円にとどまり、アン・リー監督のヴェネチア国際映画祭金獅子賞作品「ラスト、コーション」(ワイズ・ポリシー)は話題になっていたにも関わらず、興行収入3億に届かなかった。単館ロングランという興行形態が消滅した現在、3スクリーン程度の館数で公開され、ほとんどのミニ・シアター系の作品が4週ほどでバタバタと切られていく。その結果、単館アート系の買い控えがはじまり、今後は劇場の作品不足の時代さえ予想される。

図表3.外国映画市場シェアの推移
日本映画 ハリウッド映画 ハリウッド以外の外国映画
本数 興行収入 観客動員 本数 興行収入 観客動員 本数 興行収入 観客動員
2000年 282 543億3,400万円 4,306万人 81 611億2,400万円 4,843万人 281 554億0,400万円 4,390万人
シェア 43.80% 31.80% 31.80% 12.57% 35.77% 35.77% 43.63% 32.42% 32.42%
2001年 281 781億4,400万円 6,376万人 65 765億1,400万円 6,241万人 284 454億9,600万円 3,711万人
シェア 44.60% 39.00% 39.04% 10.31% 38.22% 38.22% 45.07% 22.73% 22.72%
2002年 293 532億9,600万円 4,355万人 68 932億8,600万円 7,621万人 279 501億9,900万円 4,101万人
シェア 45.80% 27.10% 27.08% 10.62% 47.40% 47.40% 43.59% 25.51% 25.50%
2003年 287 671億2,500万円 5,361万人 93 850億0,600万円 6,790万人 242 511億2,800万円 4,084万人
シェア 46.10% 33.00% 33.02% 14.95% 41.82% 41.82% 38.90% 25.15% 25.15%
2004年 310 790億5,400万円 6,445万人 78 899億3,000万円 7,183万人 261 419億2,900万円 3,381万人
シェア 47.80% 37.50% 37.89% 12.01% 42.63% 42.23% 40.21% 19.87% 19.87%
2005年 356 817億8,000万円 6,646万人 81 730億9,000万円 5,894万人 294 432億9,000万円 3,505万人
シェア 48.70% 41.30% 41.42% 11.08% 36.88% 36.73% 40.21% 21.84% 21.84%
2006年 417 1,079億4,400万円 8,904万人 96 737億1,300万円 5,798万人 308 212億7,700万円 1,726万人
シェア 50.80% 53.20% 54.20% 11.69% 36.32% 35.29% 37.51% 10.48% 10.50%
2007年 407 946億4,500万円 7,778万人 78 821億2,900万円 6,759万人 325 216億6,800万円 1,782万人
シェア 50.20% 47.70% 47.66% 9.62% 41.38% 41.41% 40.12% 10.91% 10.91%
2008年 417 1,158億5,900万円 9,543万人 68 563億2,600万円 4,640万人 320 226億5,100万円 1,866万人
シェア 51.90% 59.50% 59.46% 8.43% 28.90% 28.91% 39.70% 11.62% 11.62%


出典:掛尾良夫(キネマ旬報映画総合研究所取締役所長) キネマ旬報映画総合研究所