日本

2008年の日本映画市場の概況

2008年の日本映画は興行収入1,158億5,900万円を上げ、2007年の946億4,500万円を大幅に上回った。公開本数418本は前年の407本から11本増えた。パー・フィルムの興行収入では、2007年は2億3,254万円だったが、2008年では2億7,717万円と大幅に上昇した。興行収入10億円以上の作品は28本あったが、そのうち東宝が21本を配給し、昨年以上の圧倒的なパワーを発揮した。宮崎アニメ「崖の上のポニョ」の155億5,000万円は想定内としても、実際にここまでの数字は流石である。さらに「花より男子ファイナル」の77億5,000万円、「容疑者Xの献身」の49億2,000万円は予想を超えるものとなった。

一昨年話題となったワーナー・ブラザースによるローカル・プロダクションは「L change the WorLd」が31億円と気を吐いたが、「Sweet Rain 死神の精度」(5億300万円)、「ICHI」(4億4,500万円)、「銀幕版 スシ王子! ニューヨークへ行く」(3億6,500万円)などは振るわなかった。

東映の「相棒―劇場版―」の44億4,000万円は、テレビ朝日の人気ドラマの映画化で、ヒットは予想されていたが、ここまで伸びるとは予測されていなかった。また、キネマ旬報ベスト・ワン、監督賞(滝田洋二郎)、アカデミー賞外国語映画賞を受賞した松竹の「おくりびと」(30億円)も評価されるべき作品である。人間の死、死者と残された家族をテーマに、納棺師という職業を通して若い夫婦が強い絆で結ばれ、同時に死を扱う職業への蔑視を払拭する物語は、普遍的なドラマ性と主人公の深い人物描写がバランスよく描かれ、そこが海外にも通じる作品となった。このような重いテーマの企画にテレビ局が関わった意味は大きく、この成功をバネに、さらなる野心的企画が生まれることが期待される。

一方、2008年はインディペンデントの作品が興行的に振るわなかった。日本映画の興行収入1,158億5,900万円のうち、東宝、松竹、東映の3社の興行収入合計は約972億9,000万円で、日本映画の興行収入の83.9%となっている。3社の配給本数は74本で日本映画全体の配給本数418本の17.7%に過ぎない。つまり、344本(82.3%)の作品で、185億6,900万円(16%)の興行収入を分け合っていることになる。パー・フィルムの興行収入でも、大手3社が13億1,472万円に対して、インディペンデントは5,397万円と大きな格差となっている。そして、このインディペンデントの中には、ワーナー・ブラザースのローカル・プロダクション作品の約45億円が含まれており、その分を差し引けば、さらに数字は悪化する。

日本映画、外国映画を問わずインディペンデントは苦境にある。そして、2008年に外国映画の公開本数が減少したのに、日本映画の公開本数は増えている。外国映画の公開本数が減少したのは、2003年からはじまった下降傾向から、インディペンデント輸入配給会社が買付を控えたからである。時間をおいた2008年になってから減少に転じたのは、それまでに買い付けた在庫があったからだ。一方、日本映画は2008年になっても減るどころか増えている。それは、映画産業に進出した異業種や、外国映画の輸入配給から日本映画の製作へシフトした会社の日本映画製作が、昨年前半くらいまで活発に行われていたからである。しかし、新規参入の日本映画は結果が伴わなかった。製作に歯止めがかかりはじめたのは、2008年の夏になってからだ。それまでに撮影がはじまっていた映画が完成し公開されたことで公開本数が増えた。日本映画の公開本数が減少に転じるのは2009年の後半くらいからと予想されている。

2008年のインディペンデントの作品に触れると、アスミック・エースは「ハンサム★スーツ」(8億6,000万円)、「明日への遺言」(6億円)と頑張った。また、「西の魔女が死んだ」(4億5,000万円)、「グーグーだって猫である」(3億6,000万円)も健闘したと言える。ほかにはクロックワークスの「アフタースクール」(5億5,000万円)が目立ったが、同社は2007年にも「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」(20億円)という大ヒットがあり、存在感を示した。角川映画は昨年同様、3億円以上の作品は「超劇場版ケロロ軍曹3 ケロロ対ケロロ天空大決戦であります!」以外になかったが、長い歴史を残す会社だけに奮起を期待される。また、2007年には「蟲師」(5億5,000万円)、「僕は妹に恋をする」(5億円)、「キサラギ」(4億1,000万円)があったショウゲート、「パッチギ!LOVE & PEACE」(6億円)があったシネカノンなどには、残念ながら目ぼしいヒットがなかった。

出典:掛尾良夫(キネマ旬報映画総合研究所取締役所長) キネマ旬報映画総合研究所