日本

日本映画産業の変遷

日本映画のシェアが外国映画を大幅に上回る

2008年の年間映画観客数は、2007年の1億6,319万人より270万人下回り1億6,049万人となり、前年対比98.34%と微減となった。興行収入では、2007年の1,984億4,300万円より36億700万円下回り1,948億3,600万円、前年対比98.18%と観客数と同様微減となった。一方、スクリーン数は2007年の3,221から138スクリーン増加し3,359となった。そのうちシネコンは2,659スクリーンまで増え、全スクリーンに対する比率は2007年の76%から79%に拡大した。なお、スクリーン数が増加する一方、観客数は微減ということで、パー・スクリーンの観客数は、2008年は、2007年の50,665人より2,886人減の47,779人で、前年対比94.3%となった。パー・スクリーンの興行収入でも2007年の6,160万9,128円から360万4,961円減少して、2008年は5,800万4,167円で、前年対比94.14%となった。日本映画産業は、この10年間、観客数、興行収入では横ばいを続け、全体的には安定しているかのように見えるが、映画館ビジネスに関してはパー・スクリーンの数字が減少し続けており、困難な状況に突入しつつある。

2008年の公開本数は日本映画418本、外国映画388本、合計806本と、2007年の日本映画407本、外国映画403本、合計810本から4本減となった。

2008年の特筆すべきことは、日本映画の興行収入が外国映画を大幅に上回ったことである。一昨年の2006年、興行収入における日本映画のシェアは21年ぶりに外国映画のシェアを上回ったが、それは53%とわずかなものであった。そして、昨年は再び外国映画が52%とシェアを回復した。しかし、2008年は日本映画が59.46%と大幅に外国映画を上回った。日本映画にとっては喜ばしいことだが、全体の観客数は微減であり、大量の外国映画の観客が日本映画にシフトしたに過ぎない。外国映画が昨年と同数で、日本映画の観客が上乗せされなければ拡大にはならないのだ。そして、この外国映画の落ち込みは、日本の外国映画ビジネスに大きな影響を与えることになった。

 

2極化のさらなる拡大

2006年に興行収入における日本映画のシェアが外国映画を上回ったときには、ワーナー・ブラザースのローカル・プロダクションによる作品3本で興行収入100億円を超え、アスミック・エース、シネカノンの作品でも興行収入10億円を超えるものが3作品あった。しかし、2008年は、興行収入10億円を超える大手3社以外の作品は、ワーナー・ブラザースの「L change the WorLd」(31億円)、東映、ギャガの共同配給による「クライマーズ・ハイ」(11億8,000万円)しかない。外国映画も同様で、全体の興行収入を下げたなかで、ハリウッド・メジャーとインディペンデントの格差が広がっている。 つまり、日本映画でも外国映画でも、ヒット作は大手、メジャーから多数生まれ、インディペンデントからはヒット作が生まれにくくなってきている。この理由はいくつかの要素が相互に関連している。

まず、全スクリーンの80%に達したシネコンがヒット作に偏った上映を行っていることが挙げられる。また、2次使用マーケットの縮小により、日本映画の製作費、外国映画の買付費が回収できなくなり、体力の弱いインディペンデントが苦境に追い込まれていること、そして観客の嗜好の変化により、高齢ファン層が多様な映画文化を享受する一方、若い映画ファンが大型日本映画を好む傾向にあるということも要因に挙げられるだろう。さらに、インディペンデントの企画力の弱体化も関係している。体力的に劣るインディペンデントでは、企画開発費、企画選別の幅で大手よりも厳しい状況に追い込まれている。

テレビ局と組む大手の映画は強力な情報発信力で作品認知度を上げ、「花より男子ファイナル」(77億5,000万円/TBS)、「容疑者Xの献身」(49億2,000万円/フジテレビ)、「相棒―劇場版―」(44億4,000万円/テレビ朝日)と大ヒットを飛ばす一方で、「おくりびと」(30億円/TBS)、「わたしは貝になりたい」(2009年/TBS)、「誰も守ってくれない」(2009年/フジテレビ)など、以前よりも硬派なテーマも取り上げ、企画の幅を広げている。さらに東宝はテレビ局と組まない企画「デトロイト・メタル・シティ」(23億4,000万円)をヒットさせたことが注目される。

映画業界のニュースとしては、UIP(ユナイテッド・インターナショナル・ピクチャーズ)が2007年に営業を終了し、2008年1月からパラマウント・ピクチャーズ・ジャパンが発足した。しかし、UIPのもう一方のパートナーのユニバーサルはすでに2007年に独立、配給を東宝東和に委託して営業を開始しており、大きな衝撃とはならなかった。むしろ、2008年の末に、広告代理店の電通が傘下に収めていたジェネオン・エンターテインメント(旧パイオニアLDC)の株式の過半数を、ユニバーサルが電通から購入したことの方が大きなニュースとなった。また、「ベオウルフ/呪われし勇者」、「センター・オブ・ジ・アース」といった3D映画が公開され、いよいよ、3D時代の到来を予感させる年でもあった。3D映画は、興行界が観客の関心を集める起爆剤と期待しており、普及の加速が期待される。

図表2. 2008年各社配給状況(日本映画・外国映画合計)
会社名 年間興収 (シェア) 公開本数 (シェア)
東宝 739億1,459万円 37.9% 29 3.6%
ワーナー・ブラザース映画 163億9,213万円 8.4% 19 2.4%
松竹 160億1,518万円 8.3% 20 2.5%
東宝東和 141億1,885万円 7.2% 14 1.7%
東映 119億7,561万円 6.1% 19 2.4%
ウォルト ディズニー 108億4,460万円 5.6% 6 0.7%
パラマウント ピクチャーズ 81億7,614万円 4.2% 6 0.7%
20世紀FOX 78億7,001万円 4.1% 16 2.0%
ギャガ・コミュニケーションズ 77億5,348万円 4.0% 16 2.0%
ソニー・ピクチャーズ 68億3,983万円 3.5% 18 2.2%
アスミック・エース 60億2,945万円 3.1% 10 1.3%
角川映画 36億1,133万円 1.8% 18 2.2%
その他 112億9,480万円 5.8% 615 76.3%
合計 1,948億3,600万円 100% 806 100%


出典:掛尾良夫(キネマ旬報映画総合研究所取締役所長) キネマ旬報映画総合研究所