日本

外国映画の停滞と日本映画へのシフト(日本映画バブル)

前述した通り、2002年に興行収入における日本映画のシェアはワーストを記録したが、以後、急速な回復を示し、2006年には21年ぶりに日本映画が外国映画のシェアを上回った。しかし、この間の映画観客数はほぼ横ばいであり、外国映画ファンが日本映画にシフトしたに過ぎなかった。かつて、外国映画ファンと日本映画ファンはかなりハッキリと分かれていた。それは上映する映画館が違っていたことが大きい。それがシネコンの普及により、外国映画も日本映画も同じ建物で上映されるようになったことから、互いに身近な存在となった。そして、「海猿」、「恋空」、「電車男」、「花より男子」などテレビ局主導の作品が、若者を中心とした大きな観客を集めるようになった。外国映画でヒットする作品は「パイレーツ・オブ・カリビアン」、「ハリー・ポッター」、「スパイダーマン」といったブロック・バスター作品に限られ、ハリウッド映画でも中規模以下の作品は苦戦を強いられるようになった。

このように、日本映画の活況は外国映画に大きな打撃を与えた。特に日本の外国映画輸入配給会社に甚大な影響を与え、外国映画輸入配給の大手も買付から撤退した。また、単館系の外国映画には若い観客が集まらず、輸入配給会社は厳しい状況に追い込まれた。数年前から買付は控えられていたが、いよいよ購入していた作品の在庫もつき、2008年にはついに外国映画の公開本数は前年より40本も減少することになった。

日本映画が若い観客から支持されることから不振に陥った外国映画輸入配給会社は、日本映画の製作、配給に進出した。異業種の映画業界の参入と重なり、日本映画の製作はバブルと言われるほど増えた。2003年には287本しかなかった日本映画の公開本数は、2006年には417本まで増加した。しかし、このように参入した日本映画はほとんどシェアを獲得することができなかった。こうして、小規模な外国映画輸入配給会社、日本映画製作・配給会社は存亡の危機に直面するようになった。また、ハリウッドの日本支社も、中規模以下の映画の不振から、日本映画の製作、ローカル・プロダクションに進出するようになった。2006年、ワーナー・ブラザースは「デスノート」、「デスノート Last name」、「ブレイブ・ストーリー」の3本で100億円を超える興行収入を上げた。しかし、2008年に配給した「死神の精度」、「銀幕版スシ王子! ~ニューヨークへ行く~」、「Ichi」、「252 生存者あり」は期待には届かない結果だった。2009年には、ワーナー・ブラザースに続いて、ソニー・ピクチャーズ、20世紀FOXもローカル・プロダクションに参入する予定である。

現在の映画業界

現在の映画業界、特に小規模外国映画輸入配給会社、日本映画製作会社の苦境は、2次使用、ビデオ・レンタル市場の不振が強い打撃となっている。以前は興行の不振をビデオが支えたが、今やビデオ・レンタルでもヒットと外れの2極化が進み、映画興行で不振だった作品はビデオでは扱われなくなってきている。さらにテレビ放送でも、単館系の作品は値が下げられるか扱われないようになった。

しかし、現在の状況を冷静に見つめれば、わずか5~6年前の年間公開本数600本程度の時代に戻った、つまり粗製乱造から健全な状態に戻ったと見ることもできる。問題なのは、600本の公開本数で、3,300スクリーンは多すぎるということだ。かつては、スクリーン数が多くても、2番館、名画座など、映画館の間で重層的な上映が行われていたが、全スクリーンの80%がシネコンになってしまった今、どのような上映の仕組みができるのだろうか。

出典:掛尾良夫(キネマ旬報映画総合研究所取締役所長) キネマ旬報映画総合研究所