日本

日本との共同製作にあたっての課題

映画の国籍について

国際共同製作が日常的になると、その映画の国籍が曖昧になってくる。もはや映画製作のほとんどが国際共同製作になったEUでは、国籍はほとんど意味をもたなくなった。国籍が必要とされるのは、映画祭出品にあたっての便宜上の国籍であったり、さまざまな国が映画製作に与えるインセンティブのためであったりする。そのときの判断基準として、出資比率、映画で使用される言語、映画製作に参加したスタッフ、キャストの国籍の構成比率などが挙げられる。日本には映画製作に対する公的支援やインセンティブなどが少なく、国際共同製作協定を結んでいる国がカナダ1カ国だけであるため、その定義がまだはっきりされていないということは確かであるが、以上に見られるように、製作会社からの出資や国際交流という意味での共同製作が活発に振興されている。その意味で、日本との国際共同製作を理解するためにはまず、日本の製作システムを理解する必要があると言える。

日本製作システム

現在の日本の映画のほとんどは、製作委員会という複数の出資者の組合によって製作されている。1960年代前半をピークに、以後、日本映画産業は長い斜陽の道をたどりはじめた。その頃の日本映画産業は大手5社(松竹、東宝、東映、大映、日活)によって構成され、それらの会社は、規模の大小はあったが自前の撮影所を持ち、自身の興行ネットワークを持っていた。つまり、製作、配給、興行という映画ビジネスの入口から出口までを自社ですべて行っていた。しかし、低迷が長く続き、1970年代に入ると、映画ビジネスの流れの中で、最もリスクの高い製作部門を切り離し、外部に発注するようになった。そこで、映画製作は複数の会社の出資によって作られるようになった。

しかしながら、1980年代に入ると日本はバブル景気に突入し、さまざまな業種から映画に出資が集まった。この頃の複数の会社による出資は、出資参加企業の機能を互いに補完しあうというより、リスクを回避するための組合だった。この組合の傾向は、バブルが弾け、複数の会社による映画製作への出資も試行錯誤を経たとき、参加することに意味のある企業の組合に転換した。すなわち、劇場公開する映画会社、原作を販売する出版社、ビデオを販売するビデオ会社、映画の広告を扱う広告代理店、映画を放送するテレビ、ラジオ局などの組合となった。こうした構成メンバーは、それぞれの持つメディアを使って映画を告知することから、相乗効果を生むことになる。現在、日本のほとんどの映画製作は、大手からインディペンデントまで、このような構成メンバーによる製作委員会によって作られるようになった。そして、大手映画会社、地上波テレビ局、大手出版社などによる製作委員会は、強力な情報発信力を発揮し、このグループで製作する作品は、極めて高い確率でヒットするようになった。だが、逆にこのグループ以外では、映画のヒットはなかなか生まれないようになってきた。

製作委員会での映画製作は、幹事会社を中心に参加者の合議で進められる。映画の著作権は製作委員会が持ち、売上は構成メンバーの出資比率に応じて配分される。例えば、製作委員会の構成メンバーである放送局やビデオ会社も、製作委員会から放送権、ビデオ販売権を購入する。そして、放送局、ビデオ会社は、自身が支払った放送権料、ビデオ販売権料から、自身の出資比率に応じて配分金を受ける。

この日本の製作委員会で海外と国際共同製作を進めると、困難が生じる場合もある。パートナーの国のプロデューサーと製作委員会の幹事会社のプロデューサーによって製作が進められる場合、シナリオやキャストの変更などが起きたとき、製作委員会の承認を得なければならないためである。一定の範囲内までなら幹事会社のプロデューサーに一任できても、重大な問題では製作委員会の承認が必要となる。例えば、韓国や中国のように撮影現場で監督に強い権限が集中するパートナー、また欧米のようなプロデューサーに強い権限が集中するパートナーと映画を製作する場合、製作委員会のシステムでは対応が困難となることがある

出典:掛尾良夫(キネマ旬報映画総合研究所取締役所長) キネマ旬報映画総合研究所