中国

中国の映画市場

中国の映画産業では、国家広播電影電視総局(ラテ局)管理のもと、国営企業である中国電影集団公司(中国映画グループ会社)が大きな存在としてあり、傘下に輸出入会社、配給会社、デジタル・シネマ配給会社、マーケティング会社、撮影所、2次配給会社など、約35の子会社がある。このグループ会社の売り上げだけで、中国全体の50%強を占めている。

映画の輸出入

映画の輸出入は、中国映画グループ会社の子会社である中国電影集団公司電影進出口分公司(中国映画グループ映画輸出入支社)の1社にのみライセンスされている。輸入に関して、最終的には、ラテ局の承認を得なければならない。現在、中国側から、外国映画を輸入する場合は以下の2つのパターンがある。

  1. 中国映画グループ映画輸出入支社が関心を抱いた作品を、権利者から購入する。
  2. 中国に2社ある配給会社、中国電影集団公司電影発行放映分公司(中国映画グループ映画配給上映支社)と華夏電影発行有限責任公司(華夏映画配給有限責任会社)が外国映画に関心を抱いた場合、中国映画グループ映画輸出入支社に推薦し、輸入手続きを依頼する。また、地方の有力な映画興行会社、2次配給会社(後記)から推薦を上げる場合もある。

外国のセラーから中国に購入を促す場合は、上記の逆の流れで、各会社にアプローチする。WTOに加盟した中国は、2008年現在、年間、利益配分型輸入20本、買切型30本弱の外国映画を輸入枠としている。利益配分型とは、配給収入に応じて契約された印税を払う、今、一般的に行われている取引である。買切型は、劇場上映権ないしオールライツを、一定の金額で取引することで、その契約された作品がいかにヒットしても、追加の印税は支払われない。利益配分型の20本は、今後、しばらくの間増える可能性は無いとのことである。また、買切型については、その年の中国映画の状況から、28~29本と調整されるが、こちらも大幅に増加する可能性は低い。

現在、輸入される映画の80%はハリウッド映画であり、日本映画では、『ドラえもん のび太の大冒険』(2008年1月公開)がはじめて利益配分型の契約で取引が行われた。買切型では、2007年に『日本沈没』、『ドラえもん』などが取引されているが、ここ数年、中国に輸入される日本映画の本数は多くない

外国映画の上映

  1. 輸出入公司から買付の申し込み。または、日本のコンテンツ・ホルダーは中国輸出入公司に提案。
  2. 広電総局の承認を受け、輸出入公司は、利益配分型、買切型のいずれかで輸入。
  3. 中国の配給会社は、中国電影集団公司電影発行放映分公司、夏電影発行有限責任公司の2社しかなく、両者のいずれかを通じて全国各地に36社ある2次配給会社へと映画は流通する。
  4. 36社ある2次配給会社から3700~3900あるという映画館に配給される。
  5. 映画館は経済力の高い沿海地域の人口500万人以上の都市(40弱ある)に集中し、ここだけで全体の興行収入の90%をあげている。

映画の配給

映画の配給については、国産映画、外国映画ともに、中国映画グループ映画配給上映支社と華夏映画配給有限責任会社の2社のみにライセンスされている。この2社から配給された作品は、全国に36社ある「院線」と呼ばれる2次配給会社を通じて、全国にある約3700~3900スクリーンに流通する。

「院線(2次配給会社)」とは、現在の配給システムができる以前、全国の自治体にあった映画配給を扱う部署を発展的に企業形態にしたものといわれている。

中国映画事情で、今まで、誰に聞いても明確に説明を受けることができなかったのが、映画配給の歩率である。今回の取材では、様々な関係者に、この配給歩率の質問したが、微妙に異なる説明だった。その、答えを総合すると、おおむね次のようになる。

全体の興行収入を100とすると、ここから3.3%の営業税、5%の映画振興金が抜かれる。次に残りの91.7%から映画館は約半分の45%を取る。そして、残りの45%から約39%は輸入会社と配給会社が取り、2次配給会社が5~6%を取ることになる。海外のコンテンツ・ホルダーに対しては、 39%の中から、約26%が支払われる。また、輸入するにあたって、中国では、様々な審査を受けなければならないが、その費用は輸入会社と配給会社で負担する。

現在の中国では、さまざまな事情から、輸入会社、配給会社にとっては純粋なビジネスを展開できない側面がある。例えば、全ての配給会社は自社の収益のうち一部を公益的な活動に出さなければならない。中国の国産映画の助成、少数民族映画の助成、辺鄙なところでの映画上映のための助成補助金を提供しなければならないからだ。

広告宣伝に関しては、契約書の中に海外の権利者、配給元、映画館管理会社がそれぞれ責任を果たすことになっている。よって、海外の業者もその分トップオフされる。また、2次配給会社にインセンティブを与えるため、配給元は自分の取り分から一部助成金を2次配給会社に与え、宣伝PR資金を提供する。

中国には現在、3700~3900スクリーンがあり、超大作の場合、ほぼ全国一斉に公開される。その他の小さな作品の場合は、一斉公開ではなく、地域ごとに、あるいは一部の2次配給会社を選び、公開される。

中国映画産業の全体像でも記したが、中国には、人口500万人以上の都市が30強あり、それが沿海部に集中している。それらの都市に約3億~4億の人口がいて、中国全体の映画興行収入の90%以上を上げている。つまり13億人の市場といっても、現在、実際の映画ターゲットは3~4億人程度であり、一部の限られた富裕層だけの市場である。しかし、現在、中国では、急速に中小都市部、農村部へデジタル・シネマの普及、拡大を目指しており、経済の発展と可処分所得の増大が実現すれば、巨大な市場が生まれることも間違いない。

興行(劇場)

中国の映画館数は現在約3700~3900スクリーンといわれている。このうち、シネマ・コンプレックスは120~130サイトだが、ここ数年急増しており、これに伴いスクリーン数も大きく伸びることが予想される。2007年の中国全体の興行収入は約33億元(約530億円)で、中国映画のシェアが 55%となっている。中国には人口500万人以上の大都市が30強あり、推定3~4億人の、この市場だけで、中国全体の興収の90%以上をあげている。これらの経済力の高い都市は沿海部に集中し、今後、中小都市、農村部への劇場整備が急務となっている。

入場料金は地域によって異なり、北京では大人が60元から70元で子供は半額。ちなみに子供の定義は身長140cm以下という。学生料金は大人から10元安い。さらに夏休みと冬休みに限定して、学生向けのディスカウント・カードを発行しており、それを使えば半額となる。他にも様々な割引制度があり、平日の18時前だと70%、夏場8時30分、冬場9時30分までの入場と祭日の初回は半額になる。毎火曜日は18時まで半額、夜でも70%で観ることができる。60歳以上、身体障害者はいつでも半額である。

入場料金は同じ北京市内の映画館でも、5つ星、4つ星という劇場ランクによって異なることがある。重慶では1番高い入場料金でも45元である。中国では映画館レイティング委員会によって星のランクが付けられている。

また、中国には成人映画、ポルノ映画に18歳未満入場禁止といった作品に対するレイティングがない。性的描写の激しい映画はカットされるが、制度上は小学生でも「ラストコーション」を見ることができてしまう。

提供:掛尾良夫(キネマ旬報映画総合研究所