映画国籍の定義

オーストラリアでは、「オーストラリア映画」の定義はオーストラリア映画法(2008年スクリーン・オーストラリア法(Screen Australia Act 2008)、1997年所得税評価法 (The Income Tax Assessment Act 1997)、1999年放送事業者[オーストラリアコンテンツ]基準(The Broadcasting Services (Australian Content) Standard)によって定められる。この法律では、スクリーン・オーストラリア(政府の映画金融開発振興機関)からの投資、税制優遇措置、または自国放送コンテンツ・ポイントなどの便益を享受する資格のある映画を定義している。

「オーストラリア映画」の定義には、全面的または実質的にオーストラリアで製作され、かつ顕著なオーストラリアコンテンツを含む作品だけでなく、オーストラリア連邦(または連邦当局)および外国(または外国当局)との協定に基づき製作された作品も含まれる。連邦政府およびオーストラリアのコンテンツ監督当局は現在までに、カナダ・ドイツ・アイルランド・イスラエル・イタリア・イギリスの各国政府、およびフランス・ニュージーランドの担当当局とかかる協定を結んでおり、この協定に従って「公式共同製作」とみなされ、オーストラリア映画としての認証資格が得られる。2007年には、シンガポール政府、中国政府と共同製作協定を締結した。

スクリーン・オーストラリアは、上記の指針の範囲内で公式共同製作事業を統括する。この指針は、公式共同製作の検討対象国に適用される条約または覚書(MOU)と併せて解釈されるべきである。個々の共同製作作品は、該当する条約または覚書に記載された全条項および付属文書に従ったものでなければならない。全ての条約および覚書により、共同製作の全分野において一定期間を通じ、製作・財政の全要素の総合的バランスを維持することが義務づけられている。従って、たとえ以上の指針に照らし適格な提案であっても、その提案が、所定の条約または覚書の元で承認された一連の共同製作作品に受け入れがたいアンバランスをもたらすものであれば、資格を満たさない可能性も存在する。

映画事業が公式共同製作の条件を満たすには、以下の取り決めに従わねばならない。

1. 原作、脚本

関連する条約または覚書の条項に従うことを条件として、当該事業の原作(小説やコンセプトなど)はいかなる国のものでも構わない。ただし脚本および全ての脚本草案は、いずれかの共同製作国の国民または永住者が執筆したものでなければならない。 欧州連合加盟国の国民および永住者が執筆した脚本については、オーストラリアとイギリス・アイルランド・フランス・イタリア・ドイツとの共同製作協定の条項に従い、スクリーン・オーストラリアの承認を得るものとする。

2. 製作参加者

(a) 関係国から各1名の共同プロデューサーが参加し、提案された共同製作映画の費用の100%を彼らが負担しなければならない。ただし共同プロデューサーは、自国または他国のいかなる調達源からも資金を得ることができる。

(b) 共同製作に参加する個人は、オーストラリアまたは(関連する条約または覚書に定める)共同製作国の「国民」または「居住者」でなければならない。例外として脚本または資金調達上の要請がある場合、スクリーン・オーストラリアおよび共同製作国担当当局の承認を得た上で、それ以外の国出身の俳優を限られた人数で参加させることができる。

(c) 第三国でのロケが認められた場合、当該国の国民を群衆役、端役として、またはロケ遂行に必要な業務を行う追加スタッフとして雇用することができる。

(d) オーストラリアにおいて、「国民」または「居住者」とはオーストラリア国民またはオーストラリア永住者を指す。

(e) オーストラリア人プロデューサー(個人)は、共同製作作品の著作権を保有しなければならない。

3. 製作参加の割合

(a)各条約および覚書において、当該条約または覚書に基づく共同製作で最低限必要とされるオーストラリア側参加の割合を定めている。一般の原則として、各国の製作にかかる経費は、各プロデューサーが調達した資金及び各国の製作における参加(ポイントシステムによる芸術的評価:クリエイティブ・コントロール)の割合と総合的にバランスを維持しなければいけない。クリエイティブ(芸術的)製作面の経費は、オーストラリア側の調達資本額とオーストラリア部分で費やされた予算額と一致すべきである。この割合は、一般に最低20%(MOUの場合)または30%(合作協定の場合)の出資とされる。

(b)共同製作におけるオーストラリア側の参加は、以下により判断される。

  • ポイントシステムの適用。このシステムに従い、オーストラリア人プロデューサーは、共同製作作品の主な製作スタッフに一定割合のオーストラリア国民または同国居住者を参加させねばならない。この比率は、オーストラリア人プロデューサーが負担した予算の割合に相当するものとする(ポイントシステムについては下記参照)。
  • 他のキャスト、クルーに占めるオーストラリア人の割合。
  • 共同製作のオーストラリア部分で費やされた予算額に相当する割合。オーストラリア部分には、キャスト・クルー・施設・機材、全オーストラリア人の日当、彼らの旅費・宿泊費(費用発生地がオーストラリアであるか否かを問わず)などを含めることができる。加えて、臨時費用や保険費用、完成保証料の負担割合も、オーストラリア人プロデューサーが負担する法的費用とともに含めることができる。

(c)オーストラリア人プロデューサーが負担する予算の割合は、共同製作のオーストラリア部分で費やされる予算の割合と同等でなければならない。ただし最大5%の誤差が認められる。たとえばオーストラリア人プロデューサーが予算の55%を負担した場合、オーストラリア部分への費用支出が50%未満であってはならない。

(d)オーストラリア人俳優が主要四役(アニメーション作品の場合は主要三役の声優)のいずれにも含まれない場合、オーストラリア人の全体的割合を調整するため、技術スタッフまたはその他キャストの参加率を増やさねばならない。

(e)共同製作作品の脚本家および監督がともにオーストラリア国民または同国永住者でない場合、オーストラリアの製作者の参加割合を、そうでない場合の最低水準以上に増やさねばならない。

ポイントシステム

オーストラリア人プロデューサーの予算負担割合と、主な製作参加者におけるオーストラリア人の割合(クリエイティブ・コントロール=芸術的コントロール)のバランスを評価するため、オーストラリア人の参加割合を「ポイントシステム」に基づいて算出する。

実写作品

(a)作品1本につき12ポイントを加算。以下のようにポイントを算出する。

監督 2ポイント
脚本家 2ポイント
撮影監督 1ポイント
作曲家 1ポイント
編集 1ポイント
美術監督 1ポイント
主要四役(各々) 1ポイント
1ポイント
1ポイント
1ポイント
合計 12ポイント

(b)プロデューサーについては、本来的に共同製作国から一人ずつの参加が前提であるため、ポイント加算の対象にならない。

(c)個々のプロジェクトごとに、スクリーン・オーストラリアが追加ポイントを認めることもある(SF作品の模型製作、ミュージカルの振付師に加算など)。

ドキュメンタリー作品

(a)映画1本につき10ポイントを加算。以下のようにポイントを算出する。

監督 2ポイント
調査/脚本 2ポイント
映像編集またはオフライン編集 2ポイント
撮影監督 1ポイント
音楽録音 1ポイント
作曲家 1ポイント
プレゼンター(案内役) 1ポイント
合計 10ポイント

(b)声のみ出演のナレーターやコメンテーターは、基本的にポイント加算の対象にならない。海外市場では音声が吹きかえられる可能性が高いためである。

(c)個々のプロジェクトごとに、スクリーン・オーストラリアが追加ポイントを認めることもある(水中撮影などの特殊撮影技師、明らかに貢献が大きい場合はグラフィックデザイナーなど)。

アニメーション作品

(アニメーションの定義の主たる要素は、コマ撮りで撮影されていること)
(a)作品1本につき12ポイントを加算。以下のようにポイントを算出する。

監督 2ポイント
脚本家 2ポイント
レイアウト監督/レイアウトアーティスト 1ポイント
絵コンテ 1ポイント
キャラクターデザイナー 1ポイント
アニメーター/アニメーション監督 1ポイント
主要三役の声優(各々) 1ポイント
1ポイント
1ポイント
合計 12ポイント

(b)共同製作国各々の言語で吹き替えを行う場合、主要三役の声優は基本的にポイント加算の対象にならない。この場合、製作者の参加割合は、合計9ポイント中の獲得割合に応じて決定するものとする。

(c)個々のプロジェクトごとに、スクリーン・オーストラリアが追加ポイントを認めることもある(音声監督、録音/音響監督、美術監督など)。

オーストラリア側の製作参加者としてポイント加算対象となる者は、当該事業の実施時にオーストラリア国民または同国永住者でなければならない。市民権または居住資格の証明が求められる。一回の申請で、一人の人間について二つの国の国民とみなすことはできない。申請は、個人のみの申請になるが、製作がまだ完成されていない場合において法人による申請が可能となる。ただし最終的に個人に書きなおす必要がある。

ポイントの加算:オーストラリアとイギリスの共同製作事業の場合

オーストラリアとイギリスの合作協定においては、各国プロデューサーからの出資は、全製作費の30%及び、全クリエイティブ製作負担の30%、最高70%とされる。もし、この合作協定の基でドキュメンタリー作品が製作されるのであれば、ドキュメンタリー作品製作の10ポイントの中で最低3ポイント(いわゆる30%)がオーストラリア部分でなければいけない。

また、その作品の製作にかかった予算の30%は、オーストラリア側プロデューサーが負担しなければいけない。ただし、最大5%の誤差が認められる。もし、オーストラリアのクリエイティブ製作ポイントが3ポイント(いわゆる30%)であって、オーストラリアプロデューサーが全予算の35%を負担したのであれば、5%の誤差の中に当てはまり、共同製作作品として申請することができる。

全予算の誤差が5%以上である場合、オーストラリア作品として認められないのだが、クリエイティブ製作ポイントがその誤差を超える場合、申請が可能性になる。ただしこの場合、共同製作側の国(イギリス)は、認められない可能性があるので、最終的にオーストラリア側からも認められなくなる。

提供:Screen Australia